石川氏から電話があったのは、冷夏8月の初旬。思えば2ヵ月以内に完パケたわけで、異例のすみやかさですね。
 まず、西荻窪の喫茶店で打ち合わせをいたしまして、その時に弾語り状態のMDと歌詞を受け取りました。歌詞が全部揃っている。偉い。こうでなくちゃね。コーディネートはこうでねえとね。さっそくMDを聴いて、まず音の小ささにビックリ。レベルメーターが点灯しない。しかも片チャンネル。笑う。昔々あがた氏の遠国用弾語りDEMOカセット受け取った時を思い出すなあ。

 早速その音源を私のハードディスクレコーダーに移植。さて、どうしよう。本当はプロのギタリストが必要だと言ったんですけどね。そして何曲かは石川氏に打楽器セットを演奏してもらうつもりだったけど、彼の要望で「いいえ、メリーさん一人で全部やって欲しい」と断言されたのでビビりました。
 設計図(譜面)作って土台(リズム打込み)から作るのが普通なのですが、弾語りのテンポが速くなったり遅くなったりするところが面白い。ので、それを尊重してDEMOに肉付けしていくことにした。とりあえずアコーディオン弾いてみたり、いくつか音を重ねてみる。
 演奏は何度もやりません。早いと思います。音色やサンプリング音を探して選ぶのにすごく時間かかります。演奏は何回やり直しても、往々にして一回目がベストだったりするんですよ。ただしシーケンサー上に弾いたものは、一音ずつミスタッチ消したり、微妙にタイミングずらして(ややクオンタイズ)みたりするけどね。

 次に、たまスタジオにハードディスクレコーダー(VS-1680)持込んで石川歌録音をいたしました。彼もテイクワンが良かったりするタイプなので、作業はとてもスムーズ。何回も歌うと声が疲れて変化しちゃうので、手早くね。何しろ石川くん声デカイから〜。シャウトするからね〜。
 過去すべての録音について、歌は最後に乗っかる訳でして、その瞬間に、ウヮ〜こう歌うのかよ、マイッタな、とか、画竜点睛とはこのことだ、とかイロイロ思うのです。が、今回最初から常に歌に対して音を付けてゆくので、少なくともこんな筈ではということは無いです。

 そして今回はドラム(3曲)とギターに挑戦しました。基本は機械による正確なリズムなのですが「闇鍋」はその正確さがイヤで、へたドラムに差し換え。
「誰も起きてこないよ」も正確なリズムLOOPの上にドタバタドラムをのせた。「おいしい嘘」はDEMOの揺れるテンポに、あとからドラムをのせるという無茶をした。ドラムもあまり練習しません。練習したところで、一日で上手くなる訳無いしね。
 エレキは四曲かな。これも3弦ですね。私的には「ゴリラの面」が好きです。これは後奏で延々とピアニカアドリブソロをやってます。テイク3ぐらい録音したけど、やっぱりテイクワンがOKだったと思う。

 並べて聴くとAmの曲が多いので、ダークです。「ゴリラの面」なんて石川くんにしては随分内省的だなあと思っていたら、これティーンエイジャーの頃の曲なんだってさ。俺は今日からシンガーソングライターだと言って作った、最初の3曲の内のひとつだそうです。ウヒャー物持ちがEのね。私もだけど。
 他にもいくつか古い曲があるそうです。「40のマスカキ」てのも、こりゃまた、ミモフタモナイ曲ですな。と思っていたら、青少年の頃に作った歌なんだってさ。その後(おそらく)恥ずかしくて歌えなくなり、今40になって、もーいーや歌っちゃえということなのかしら。ちなみにこの曲は切なくて編曲出来ませんでした。ま、編曲するには曲も短かすぎるし、DEMOのまんまの方が切なさ倍増でOKだよ。ということになりました。

 全体的に私なりに歌を大切にしたつもり。骨太の改革はしてません。曲が骨太だからね。でも私だからこうなった。私じゃなければ違う物になった。ま、それはそうですね。
 11月からニヒル牛発売。通販もするそうなので、機会があったら聴いてみてね。あ、そうだ、なるべくヘッドホンで聴くことをお薦めします。なにしろキャッチコピーが「ドライブ・デート・お店のBGM等に最不適!」ですから。いやーもうホントに放送に不適切な言葉のオンパレード。

 それから「誰も起きてこないよ」「緑の沼の」など音入れすぎて、とっちらかっちゃった物を上手くまとめてくれた小俣氏に感謝です。
 言わずもがなですが、コレは濃密な石川浩司ワールドですぞ。
2003.10.22

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