以下の作文は7月にあがた森魚会報用に書いたものの転載です。最近なかなか書けなくて、引っぱり出してきました。

 先日、電話で「ちとせのアルバムで、百合コレクションをやろうと思うんだけど、メリーさんアレンジで。」と言われて、ビックリの二乗でした。
 率直に「エエ〜ッ!自信が無いなあ、それは荷が重いなあ。あの〜やるだけやってみて、無理そうだったら他の人にバトンタッチするということで。」と正直に答えてしまいました。そんな弱気でどーする。
 メジャーな舞台でのアレンジなんて、何年ぶりでしょう。もう私に頼む業界の人なんて誰も居ないと思ってましたよ。私は古い人間ですから。感覚が。パソコンは使わない主義ですし。でも単体シーケンサーは使ってるという中途半端者。
 メジャーな舞台でなくとも、マイナーな舞台でも、私に頼む人は居なくなったと思っていた。前にやったのは何だったっけ。
 あ、「るり式」だ。ウ〜ム、その前は…「汽車には誰も乗っていない」(石川浩司)だ。その他では「BLUES」とエコーユナイトを別にすれば、2000年のあがた氏の「冬サナ」とか、シロートさんに頼まれた、何の使い方をしたのか不明なオリジナル曲とか…。没になった高知のヨサコイダンスヴァージョンとか…。職業になって無いねえ…。ちゃんとしたスタジオで録音した、私のアレンジによるメジャーな物…ウワ〜1995年のヤプーズまでさかのぼるよ。といっても、これもバンドものだよね。
 はぁ〜…そーゆーことでした。今までポツリポツリとやったアレンジも「今回予算がないので、時間がないので」という物ばかりです。音楽に限らず、仕事というのは、そーゆーものですよね。
 ところが今回「希望があったら何でも言ってください、使いたいスタジオ、エンジニア、ミュージシャン、編成、楽器、なんでも用意します」と言われて、タジロギました。
 家の機材でデモテープを作ったのですが、打込みの限界は自分で分かってるので、極力生演奏でやることにした。でも譜面にオタマジャクシ書いてミュージシャンに渡しても、これもコジンマリしてしまうのが目に見えている。で、ちとせちゃんにも縁りの、というか、ちとせちゃん自身がお兄ちゃんお姉ちゃんと呼ぶ、間宮氏と珠緒さんに来てもらうことにした。口頭で説明するのだ。で、自宅打込みに、それなりの録音をして、サビに行く前にテンポがゆっくりになるところも記録して、これに合わせて演奏してもらうつもりだったのだが、間宮君に「いっそ、せーので全員でやっちゃえば」と助言されて、そのようになりましたよ。
 「Aメロはギター打ちはなしで、パーカッションはリズムを刻まない効果音的なもので、イントロはフリーで、ベースから始まるってことで。」とか説明すると、皆さん拡大解釈してくれて、タジログほどの音数の少なさ。読者の皆さんには分りづらいだろうけど、プロのミュージシャンでも、1小節に1拍以上無音の休符のある演奏を要求しても、多分無理です。誰でも音はつながってしまう。自意識過剰な人ほど音数や発する声が多くなる。しかしこのメンバーは渋いな〜。スッカスカのワビサビですよ。で、ウッドベースの長山氏とちとせちゃんも一緒に、5人で一発録。テイク4ぐらいで、アコーディオンの間奏も渋くやり過ごして、「これだ!いい感じ。このままエンディングまで全員の気持ちがひとつになりますように」と久々にドキドキしましたです。マルチトラックなので部分的に修正できるのだけど、それも無し。ギターダビングも無し。シンセでストリングスと、二つ三つ効果音的な音を入れただけで、その日の内に録音は終了しました。優秀なミュージシャンのおかげです。そして、ヴァージンVSの、特に土田君が良い演奏を残してくれたことにも感謝。なによりも、ちとせちゃんの歌のウマさよ!ちとせちゃんスゴイわ。スゴイ哀しいわ。
 てな訳で、発売日も知らないけど、出たら聴いてみてね。
2003.7.7

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